製造業に向いている人の特徴

製造業に向いている人の特徴

現代の生活において、身の回りには必ず、生活を便利で快適にする「もの」があります。それを作るのが製造業であり、主な舞台となるのは素材や組み立て品を製造する工場です。

どんな人にも適性があるように、工場勤務に向いている人には一定の特徴があります。今回は、製造業や工場勤務に向いている人の特徴について解説します。

■製造業ってどんな仕事なの?

まずは製造業について解説します。製造業とは「ものづくり」の現場であり、さまざまな業種から成り立っています。

最初の基本と言なるのは、鉄鋼やゴムなどの素材産業です。次に、素材から部品を作る部品加工メーカーがあります。その部品を加工成形し組み合わせ、自動車や家電製品など消費者が直接購入する製品を作るのは製品加工メーカーで、これらは全て製造業です。さらに言えば、製品を製造するための機械(ロボットや旋盤など)を作るのも製造業です。

どなたも小中学校の社会で習ったと思いますが、第一次産業は農林水産業で、衣食住において自然と関わる産業です。製造業をはじめとする第二次産業は、「もの」を作ることで社会や暮らしをよりよく快適にする産業です。

■製造業の特徴と魅力

○製造業の特徴

規模の違いはありますが、製造業イコール工場勤務と考えて差し支えありません。

工場での仕事とは、決められた時間から時間まで、自分の分担する作業をこなしていくことです。

営業職やサービス業の対象は「人」ですが、製造業の対象は「機械」や「もの」です。これは製造業ならではの特徴です。

○製造業の魅力

そうした製造業の魅力を端的に言えば、改善活動を通じて、作業方法やQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)などにおいて

《自分の成果をダイレクトに感じることができる》

これに尽きます。製造業以外のサービス業などでも改善は必須の項目ですが、改善の成果が最もよく分かるのは製造業と言えます。

例えば作業方法の改善について考察してみましょう。毎日機械加工の作業をしていて、終業時、切り屑がたまったバケットを持ち上げ、底に溜まった油をリサイクルポッドに捨てる作業があったとします。これは、バケットの底にドレンボルトをつければ、コックをひねるだけで下から油を抜くことができます。重いバケットを持ち上げることもなく、短時間で油が回収できます。これが作業改善です。

品質改善についても同様、個人やグループで知恵を出し改善を進めることで、QCDを向上させることができます。

自分の努力や知恵で、品質が飛躍的に向上した、コストカットできた、納期が短縮できたことを実感できれば、製造業で働くうえで、大きな財産となります。それを積み重ねていけば、仕事が面白くなり、やりがいを感じ、モチベーションが上がってきます。

■製造業に向いている人の特徴

次に、製造業には向いている方の特徴を解説します。なかには意外な特徴があるかもしれませんが、どれもが大切な素養です。

○マニアックな追究ができる人、根気のある人

マニアックな追究ができること。これは製造業で働くうえで意外に大切な特性です。

この特性は、例えばある条件の製造工程において不良が多発した場合、その原因を突き止めるという場合に生きてきます。

工程を詳細に分け、分析し、製造の条件を一つずつ変更し、または条件を変え、しらみつぶしに追い詰めて追究していく。製造業の歩留まりを向上させたり、品質を良くしたりするには、実はこうしたマニアックな追究が欠かせないのです。

根気についても同様です。19世紀に白熱電球を発明したトーマス・エジソンは、フィラメントの素材に金属線、綿糸、絹糸、髪の毛など、何千もの素材を試し、最終的に日本製の竹が最適であることを発見しました。これは、根気が一つの発明の完成に結びついた例です。

○アイデアマン、「気づき」のある人

次に必要な特徴は、他者がとても思いつかないアイデアがひらめく人や、「気づき」のある人です。戦後日本で、自らが創業した会社を町工場から世界的大企業にまで成長させた経営者が何人もいます。彼らに共通しているのは、誰も気付かなかった市場の潜在的需要に気付いたことです。需要を先見する力があったとも言えます。

もちろん世界的経営者に匹敵する能力は誰しも持ち得るものではありませんが、製造に向いている人の多くは、たくさんのアイデアが出る特徴を持っています。

○安全と危険の境界を察知できる人

工場には、さまざまな危険要素があります。巨大な力を発揮する製造機械、強酸・強アルカリなどの化学物質、高圧電力、酸欠の可能性のあるピット(地下空間)、高所、高熱、粉じんなどなど。

作業において、これらは一歩間違えれば、作業者を危険な状態に遭わせてしまいます。

それを防ぐためには、

「ここから先に行ったら危険」

「機械を止めない限り、この作業をしてはいけない」

「今日の突発的修理で、最も危険なことは何か」

こうした意識・感性が非常に大切で、そのためには日頃から危険に対する感受性を高めていなければなりません。

ただし個人がどんなに注意しても、人間であるがゆえに起こす「ヒューマンエラー」が存在します。それを防ぐために多くの機械には、誤って操作しても危険な状態にならない「フェイルセーフ」システムが備えられています。

それでもなおエラーを起こし、危険な目に遭うのが人間というものです。

しかしながら、製造業に長く勤めていても決して危険な目に遭わない人がいます。彼らは動物的感覚を持っているのではなく、感受性を高めることで、安全と危険の境界を察知する能力を身につけているのです。

○その他

上にあげた3つはとくに大切な特徴ですが、他には、

・繰り返し作業があっても飽きずに続けることができる

・コミュニケーション能力がある

・協調性がある

なども必要です。工場というと、機械に向かって黙々と単純作業を続けるイメージを持つ方が多いかもしれませんが、機械の不具合や故障の状態を性格に他者に伝えたり、チームにおける自分の役割を正しく理解し、協調して働くことも求められます。

■製造業が向いていない人は?

○製造業の環境に順応できない人

工場で機械を動かせば、必ず熱・粉じん・騒音などが発生します。

またメンテナンス作業においては、油の定期交換やスラッジ除去などを行います。油で作業服や手が汚れることは避けられません。

これらは工場に必然の環境と言え、粉じん、騒音、油汚れが苦手な人は、製造業に向いているとは言えません。

また工場の建物は屋根が高く、広い空間にたくさんの機械が置かれています。夏は機械が発する熱で、多くの工場はとても暑くなります。冬は、屋根が高いためにとても寒いです。

これも製造業に特有の環境で、これらに順応できないという方は、製造業には向いていないでしょう。

一方で、全身防護服を着てハイテク部品を作る工場では、一年を通して気温も湿度も一定しています。しかし仕事中は会話もできず、長時間顕微鏡を覗きながら細かい作業を続けるため、精神的ストレスを感じる人もいるでしょう。

つまり工場の労働環境とは、特定の「もの」を製造するための一種特殊な状態にあります。これらに順応できなければ、工場で働くことは難しいと言わざるを得ません。

○ルールを守れない人

工場には、安全や品質などにおいて、社内で決められた厳格なルールがあります。

例えば安全について言えば、機械の力は大変に大きなもので、機械にはさまれたり巻き込まれたりすると、人は大きなケガを負ってしまいます。これが労災です。それを防ぐために社内には《作業手順書》や《作業標準》があります。《入社時安全教育》、《配置転換時の安全教育》も、作業における危険な状態や労災を防止するためのものです。

また行政は、労働者が危険な状態に陥らないよう、さまざまな資格試験や技能講習制度を設けています。これらのどれもが、労災防止、あるは公害防止や環境保護のためにあります。

品質についても同様で、企業が生産する製品が一定規格内にあるよう、製造工程における原材料の扱いから作業手順まで厳密に決められています。

工場における安全や品質を守るために、社内ルールは必ず守らなければなりません。しかしルールを守れず、自己流で作業する、作業手順を飛ばすなどしてしまう方がいると、安全も品質も維持できません。

ルールを守れない人、自己流を通したがる人は工場勤務に向いていません。

○人と接するのが好きな人

工場勤務は機械に向かい、機械を操作する作業がメインとなります。長時間無言で機械に向き合い、異音や異臭に注意を継続することは、機械と対話するようなものです。

これが苦にならないという方もいれば、反対に、人と会話するほうが断然好きだという人もいます。

「好きこそものの上手なれ」

という言葉があるように、誰しも、適材適所、自分に合う仕事をするのが長続きしますし、上達も早いものです。人と接するのが好きな方が、工場勤務より営業職やサービス業に向いていることは言うまでもありません。

■まとめ

厚生労働省がまとめた「2022年版ものづくり白書」によると、日本全体で製造業における就業者数はわずかに減る傾向が続いています。年代別に言えば、共にわずかながら若年就労者が減り、高齢就労者が増加しています。

しかし、製造業は日本経済の大きな柱の一つです。就労者数減少は、技術革新で生産性が向上したためと見ることもでき、就労年齢の変化は社会全体の変化とも言えます。

またこの白書では、製造業の大きな特徴が書かれていることに注目しなければなりません。

それは、【製造業における正規の職員・従業員の割合は、全産業の正規の職員・従業員の割合に比べて15.1ポイント高くなっている】ことです。

その理由は、製造業における仕事は専門性が高く、技能の習得に時間がかかるからだと考えられます。非正規労働者を雇って短期間で交替してしまったら、それまでの教育がムダになってしまいます。

すなわち製造業とは、ひとところに腰をすえ、じっくりと自己の知識や技能を習得し高めていく職種だということです。一つの職場において追究心や改善の目を発揮することは、公私共に大きな財産となることでしょう。

製造業に向いている人の特徴を解説してきましたが、ぜひこれらを参考にして、ご自分が製造業や工場勤務に適しているかどうか考えてみてください。

データ引用元:厚生労働省ホームページ